グラデーション
昔学園祭で大きなカンバスに海に沈む夕陽を書いた。
夕暮れ
真ん中には楽しさと寂しさと誤魔化しきれない夜の恐怖をまるごと優しく包み込むオレンジを塗りこんだ。
上には迫りくる夜、来ると信じて疑わない明日への期待、それから昼間の残滓を整理するように丁寧においた。
下には海を書いた。鏡として、終幕として、水平線がぼやけるほど力強く書いた。オレンジ色の優しさと黄色の輝きと、薄い空色は思い出の名残、青は喜び。
空はその瞬間を表す1頁。
朝と夜が混ざり合うあの一瞬。だから夕暮れは美しいのだ。
楽しいはずの昼間。寂しいはずの夜。変わることのない朝。
今は夕暮れも、夕焼けも苦しくて仕方ない。
今の私には何もない。それを望んだ。なんにもない場所に行きたい、なのに、何もないとはこんなに虚しいか。だが人と生きることはできない。我儘だ。だが正しく限界でもあった。生きることもままならない。
グラデーションをただ「きれいだね。」と言えた日々を返してくれ。
いっそのこと海にほおっておいてくれ。
温かい太陽の光の裏で、冷たいオホーツク海に沈みたい。
寝られない。寝なければ。